書評
「僕は優しいんじゃなくて、優しいふりをしているだけだよ」
前作から続けて出てきたセリフだけど、優しいふりができる時点で城崎先生は優しい人だと思う。
一瞬だけは感情の起伏があるけどすぐに消え去ってしまうというのも、消えてしまっている訳ではなくて埋もれてしまっているだけなんじゃないか、と思う。
水面に一滴水を垂らすと、波紋が広がってすぐに消えてしまうけど、だからと言って垂らされた一滴の水が無かったことになる訳じゃない。一滴は一滴として、水の中に溶け込んで存在している訳で。
同じように、城崎先生の中にも感情は着実に蓄積されてるだけなんじゃないのか。
全体を通して感じたのは、地域医療の悲鳴だった。
作中に出てきた臨床現場の現状だとか、ああいう事例だとか、無いとは言い切れない。
むしろ明日にでも、今この瞬間にだってどこかで起きていても何らおかしくはないんだものな。